その時に…
俺はたまたま車に乗っていました。

車が横転するかと思うほどの揺れ…その直後に道路が地割れして5センチくらいずれるのを目撃。
目の前で電柱が倒れてきて高圧電線を切り火花が飛び、真横の家が轟音と共に崩れるのを揺れに堪えながら見ているだけでした。

つぶれた家から人が出てきたのを確認してすぐさま家に帰りましたが、どこの道路もひどい状況でした。

もちろん、家もメチャクチャで車庫のドアは全て吹き飛んでいました。

近所の人達も外に飛び出しいて、座り込んでいる女性、呆然としている人…本当にひどい光景でした。

本当に『まさか、地震がくるなんて』とみんなが思っていました。

母親がキッチンで倒れてきた食器棚で手を切っていました。
興奮している母親は大丈夫だと言っていましたが、出血が止まらないので、病院へ連れて行く事に…。

俺の車は車庫に入っていたので、半分外れた戸を強引に外して外に出し、傷ついていましたが自走できることを確認して病院へ向かいました。

助手席の母は出血が止まらないので心配でしたが、市内は道が破損したり、つぶれた家で通れないので渋滞がひどく、普段なら20分の道も1時間もかかって病院へつきました。

病院へついた時にすぐに異常な事態だと気がつきました。

緊急病棟の入り口には救急車が数台停まっていて、外にまで血まみれの人が寝かされていました。

近くでは事務の女性がへたり込んでいたり、血のついたタオルで頭をおさえて歩いている人がいたり、足を汚した人が肩を貸してもらっていたり…。

「緊急じゃない人は受付に回ってください〜」

病院の担当が叫んでいるのが聞こえて、ハッと我に返り母を連れて玄関の受付に向かいました。

玄関に入ると…床には鮮血で染まり、喧騒としていました。

受付には休日だったので呼び出されたと思える女性が私服のまま奔走していました。

「保険証はいりません。名前と電話番号、生年月日を書いてお待ちください」

その言葉を聞いて、用紙に必要事項を記入して提出。

やっと落ち着いて回りをみると、待合室で待っているのは手や足、頭から血を流しているけが人が不安そうに3,40人もいました。

「骨折なら死なないから、出血してる人が優先です」

看護婦さんが叫んでいます。


「私なんて軽症で恥ずかしいくらいだね」

母親がそうつぶやいているのもうなづけます。

しばらくして二人の女性がやってきて、簡易診断を行い、札をつけ始めました。

阪神大震災の教訓で導入された『トリアージ』を目の前で見ることになるとは…。

**************

トリアージ…災害医療における多数の傷病者を重症度と緊急性によって分別する方法。

黒 (Black Tag) カテゴリー0
 死亡、もしくは現状では救命不可能とされるもの。
赤 (Red Tag) カテゴリーI
 生命に関わる重篤な状態で、救命の可能性があるもの。
黄 (Yellow Tag) カテゴリーII
 生命に関わる重篤な状態ではないが、搬送が必要なもの。
緑 (Green Tag) カテゴリーIII
 救急での搬送の必要がない軽症なもの。

**************

母親は「緑」でした。

隣のおばあさんは倒壊した家の下敷きになり、足がしびれると言っていて『黄色』をつけられて緊急救命に運ばれていきました。

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